供給を前向きに検討すると回答したものの、わずか2Ah余りの容量のセルで本当に車を走らせられることがきるのかという不安と疑問が払拭できた訳ではありません。何かの形で実証実験をやってみたいと悩んでいたところに出会ったのが、電気自動車に携わる方なら必ずご存じであろう舘内さんが主宰する日本EVクラブが企画した「ERKサマーカーニバル2006世界初!ERK24時間耐久レース」です。イベント案内のウェブページが今も日本EVクラブのHP内に残っています。https://www.jevc.gr.jp/世界発!erk24(外部リンク)
右も左も判らないままに取り敢えずエントリーを済ませ、自部署内のカート経験者を探してレーシングカート作りスタートです。とは言え、電動カートの経験者などは居らず、モータ選びから苦労の連続でした。休日に近くのカート練習場へ試作車を持ち込み走行試験も行いました。24時間耐久ということで、当然充電をどうするかという問題もありましたが、70セルで48V系のモジュールを製作し、これを6並で搭載し、これを3セット準備し、約30分走行して電池交換し、充電は約1時間実施するという方法で24時間を走り切ることにしました。
金曜日の夜に貸し切りの小型ハイデッカーバスの荷室にカートを詰め込みスタッフが乗り込み、夜行で筑波を目指しました。レースはロケットスタートで他の追従を許しませんでしたが、直ぐにモータが焼けてしまい、モータ交換後はスピードを制限しての走行となりました。鉛電池使用で実績のあるモータでしたが、リチウムイオン電池では出力が維持されるため、モータの温度が上昇し過ぎたための様でした。
古い写真を探し出しました。24時間レースなのでカートなのにライトも付いています。夜中に走ってもわずかなロードノイズとチェーンの駆動音しかしないので、近隣にご迷惑をお掛けすることもなく、最初で最後(?)のERKによる24時間耐久レースは無事終わりました。終了後急いでバスに乗り込み月曜の早朝に会社に無事到着したのでした。
リチウムイオン電池を搭載した車両は2台だったと思いますが、もう一台は車両の製作が間に合わず途中出場となったためクラス優勝こそできましたが、鉛電池車両に対するハンディが余りにも大きく総合優勝は逃しました。具体的な走行距離は、データが残っていなかったのでうる覚えですが、1,200~1,300㎞程度走行した様に思います。実はPC用の機種と電動工具向けの高出力機種の2種のセルを使用していたのですが、この時のレースの走行状況では結果に大差はなく、PC用でも大丈夫そうだという安心感が少し芽生えました。PC用のセルにはPTCという保護素子が内蔵されているのですが、この素子が作動することがないことも確認できました。
この後もサイドバイサイドの電動化や横浜ゴム殿のパイクスピーク用のEV車両への18650サイズの電池搭載と完走、ミラ・コンバートEVによる「東京-大阪無充電の旅」でギネス記録を作る等日本EVクラブ様には色々とサポート頂き、PC用の18650が車載用に使用することへの疑問と不安を払拭して行くことができました。
因みにロードスターには当時の最高容量機種ではなく、1世代前の十分に市場実績があるセルを採用してもらいました。
次回はいよいよモデルSの発注の経緯についてです。