電池との関わり

 私が電池に関わるきっかけとなった、大恩師であります平井竹次先生が先月ご逝去されました。世の中で電池が注目されるようになった今、間違った情報も錯綜しておりますので、先生を偲んで思い出も少し交え、脱線して雑学にも触れながら電池について正しい理解をして頂くために電池の話をしていきたいと思います。できるだけ一般の人たちに判る様な解説にしていきたいと思っています。

 現在の工学部では多く見られるようになりましたが、平井先生は当時では非常に珍しい、一般企業で活躍された後に教授になられた先生でした。松下電器でハイトップ乾電池の開発に従事した方でした。この出会いこそが、私が電池に関わることになったきっかけです。4年生になる際に研究室を選ぶことになりますが、希望者が多く毎年くじ引きで決めていました。私の年も1.5倍程度の倍率であったと思いますが、無事に希望は叶いました。

 大学院も含めて3年間研究室に居ることになりましたが、元々、大学院に進学することなど頭の片隅にもありませんでした。研究室の大学院の先輩を見ていると授業の勉強だけでなく、研究室で学ぶことは多いと思い大学院にも進むことにしました。同じ大学とはいえ、新たに入学金も必要ですし、授業料も更新されます。

 私が3年間過ごした部屋は教授室とゼミ室の真向かいで、他の学生より先生と接する機会が多かったと思います。雑談も含めて社会のことを色々と教えて頂きました。

 電池は電気でもなく化学でもない電気化学という一般の人には馴染みの薄い、中途半端とも言える学術分野の範疇に属します。金属の腐食(防食技術)なども電気化学分野の技術となります。

 電池はプラス極(正極)とマイナス極(負極)と電気を流す液体(電解液:最近では固体も注目されていますが)で構成されます。学校でも習うボルタ電池は銅板がプラスで亜鉛板がマイナス極となります。電解液は食塩水か希硫酸となります。最近では、小学生の自由研究用としてレモン電池キットというものも販売されています。これらはあくまでも原理を理解するための実験用です。3つの部材で電池は出来るので基礎は非常に簡単です。逆に主構成材が3点しかないため、改良が難しいとも言えます。

 実際の電池にはこれらの部材を収納するためのケース(外装缶)や、プラス極とマイナス極が接触(ショート)しない様にするためのセパレータ(隔膜)というものも必要となります。電極からケースの外側に電気を通す必要がありますので、そういった部材も必要となってきますので、部品や原材料は十数点に及ぶことになります。

 多くの研究の中心は電極や電解質に関わるものとなりますが、実用化にはケース等の部品も不可欠なものなのです。

 基本となる重要3部材の中の1つの部材が2倍になったからと言って、電池の性能が2倍になることはありません。電池だけでなく、また技術だけでなく、多くのものごとにはメリットがあればデメリットも存在します。それらのトレードオフ関係をよく理解した上でメリットをどう活かしていくのかを判断する必要があります。

 多くの発表ではメリットは強調されますが、都合の悪いことには触れられません。それ自体は決して悪いことではなく、アピールする上では当然のことであるとも言えます。ただし、表があれば必ず裏があるということですので、単に発表内容を鵜呑みにするのではなく、より正しい判断をするためには、見聞きする側もそれなりの知識が必要となってきます。

 今回はこれで終わりますが、次回から身の回りにある電池の解説や、電圧や容量を決める因子やエネルギーについて少しずつ、できるだけ判り易くお話していきますので、関心をお持ちの方はまたこのサイトを訪問してください。

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