電池の容量は比容量(Ah/g)に依存するという説明をしました。この値が大きい方が有利なのは疑いようのないことです。ところが、実電池はこれだけで決まらないということも少し触れました。密度や電圧も非常に重要なのです。

 今回は電池の容積との関係に触れることにします。皆さんにも馴染みの深い単3電池を例に取って説明します。規格の形式は以前も説明した様にR6となります。この寸法規格は最大外径が14.5㎜で、最大高が50.5㎜となっています。誰が決めたか知りませんが、何と中途半端な数字でしょう。因みに単2の最大高は50.0㎜です。単3電池を突起や凹みがない円柱で計算すると8.622㎤の体積になります。不利な数値とはなりますが、体積密度を算出する際にはこれをベースすることが多いと思います。中にはアルキメデスの原理を利用した測定法でできるだけ小さな値で、有利な体積密度を出したいという人もいるかもしれません。この数値は外寸基準で算出した値であり、実際にはラベルや缶の肉厚、デッドスペース等もあるため、内容積はこれより小さな値となります。計算が簡単になる様に内容積を仮に8㎤とします。ここに入る量を比較してみることにします。本来、正・負極とセパレータ,電解液や絶縁部材が入ることになりますが、判り易く比較するため、金属負極のみで比べてみることにします。前回も比較した亜鉛とリチウムで計算してみましょう。水素が気になる方もいる様なので一緒に計算してみます。

負極活物質 比容量(Ah/g) 密度(g/㎤) 8㎤の容量(Ah)
Zn2+/Zn 0.820 7.13 7.13 X 8 X 0.820 = 46.77
Li/Li 3.862 0.53 0.53 X 8 X 3.862 = 16.37
(2H/H2 26.81 0.00009 0.00009 X 8 X 26.81 = 0.019)

 何と亜鉛が大逆転です。これは理論的な計算値です。亜鉛を負極に使用している実際のアルカリマンガン乾電池の単3サイズの容量は約3Ahです。一般的な電池ではセルの外装体積に対して負極が占める割合は1/10にも満たないという計算になります。水素は気体だけに体積当たりではメリットは活かせず、ガスのままでの使用は困難であり工夫が必要となります。ニッケル水素電池では、水素吸蔵合金という材料にガスを吸収させることで大幅に体積を小さくすることに成功しています。

 容量には比容量(Ah/g)が重要であることを説明しましたが、質量当たりだけでなく実電池では体積当たりの容量も重要であるということをいくらかご理解頂けたかと思います。「鉄1トンと棉1トンとどちらが重い?」というなぞなぞをご存じの方も多いかと思いますが、1トンの鉄は乗用車にも積み込めますが、1トンの綿をねじ込むのは大変です。どちらがいいという単純なものではなく、バランスが重要です。どちらかだけに注目するのではなく、高い次元でのバランスが必要となってきます。

 何事も一方的な見方ではなく、色々な観点、角度から観察して総合的な判断をすることが肝要です。最近はSNSの普及もあり、感覚的に即応してしまう傾向が強いように感じます。スピードを求められるものでない限りはワンクッション置いた上で反応して欲しいものです。