話が急に飛んでしまいますが、今朝のニュースで携帯扇風機の爆発や発火が取り上げらえており、NITEでの試験の様子も放映されていました。
「電極の製造」の最後の部分でも安全性に触れましたが、信頼のおけるメーカのものを選ぶというのがやはり重要であると思います。ニュースでも注意点の一つに挙げられていました。
EV用の電池でもしばしば取り上げられますが、リチウムイオン電池だけが危険な訳ではありません。電池はエネルギーを貯めているので、このエネルギーが一気に放出される状態になってしまうと異常発熱,発火,破裂といった現象を引き起こす危険性はあります。基本的にはエネルギー密度が高い程、多くのエネルギーが詰め込まれているということになりますので、危険度は高くなる傾向になります。
また、乾電池や蓄電池、ニッケル水素電池等は水溶液系の電解液が用いられているので燃焼という現象は比較的発生しにくいのですが、破裂が起こることはあります。鉛蓄電池やニッケル水素電池は充電の際にわずかですが、水の電気分解により水素と酸素が発生しています。充電制御ができていないと水の電気分解が進行し、水素と酸素の理想混合気体が生成します。解放系では問題ないのですが、密閉空間でこれらのガスが充満して火花が出ると破裂する危険性があり、周囲の可燃物が類焼することも考えられます。
乾電池は単セルで使用している限りほとんど大きな問題はありません。ただし、アルカリの場合は液が漏れて皮膚や目に触れると炎症を起こしてしまいます。乾電池でも直列に使用する際は注意が必要で、3本以上を直列する場合に間違って1本だけ逆向きに入れてしまうと、逆向きの電池が充電されて破裂することがあります。直列本数が多いほど発生しやすくなります。玩具等で直列数の多いものがありますので、要注意です。
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、電解液に有機溶媒を使用している関係で、燃焼の危険度は高くなります。また、最近のほとんどの機器はリチウムイオン電池が採用されており、注目が集まりますし、より信頼性の高い製品を目指す必要があります。
他の電池系より厳密に品質管理をした上で製造し、更に使用する際にも安全のための対策が必要となってきます。残念ながら品質管理の不十分なメーカの電池や安全対策が不十分な製品が日本国内でも出回る様になってしまいました。これは安全を確保するために制定されたPSEが逆に粗悪品を日本に上陸させることに繋がってしまったと言わざるを得ません。
NITEでは「圧壊試験」と呼ばれる試験を実施していたようですが、標準的な安全規格には外圧による内部短絡を模擬した試験が削除されています。
いくら品質管理がしっかりした工程で電池が作られたとしても、外圧には勝てません。しかし、万一外圧による内部短絡が発生した場合の危険度を最小限にする取り組みが求められておりますが、真剣に取り組んでいるメーカはどれ程あるのでしょうか。携帯扇風機の事故はそれ以前の問題で、電池の品質レベルの問題であろうと想像します。
我々は「圧壊試験」や「釘刺試験」といった外圧による内部短絡発生時の現象確認を重視して評価しております。釘を刺しても燃えない電池も実際に存在します。最近の異常発生の傾向としては、釘を刺した瞬間に発火するものが圧倒的に多くなっています。有機電解液が燃えるのではなく、まず電極自体が発火して電解液に類焼しているという様に見受けられます。動画から切り取ったパウチセルの釘刺試験での発火例を添付します。
先に述べた様にエネルギーが一気に放出されることが問題ですので、満充電に近い電池の方が危険度は高くなります。携帯扇風機だけでなく、モバイルバッテリー等で常に満充電に近い状態で携帯するということは、性能維持の観点でも安全性の面でもお勧めできる使用方法ではありません。例えばモバイルバッテリーで充電するなら容量が30%以下になったら充電し、70%になったら充電を停止するといった使用方法が好ましいと言えますが、当のモバイルバッテリー自体の品質にも十分気を付ける必要があり、聞いたこともなりメーカの製品もあり、これが最も怪しいかもしれません。