電圧について

 誰もがご存じの電圧の単位はV(ボルト)です。何か気になりませんか?前に出てきたボルタ電池を発明したボルタに由来しています。因みにボルタはイタリア人でピサの斜塔で有名な地域の出身だそうです。

 最初から脱線ですが、単位には大文字で表記するものと小文字で表記するものがあります。実際には混用される場合も多く見られます。厳格な決まりではないかもしれませんが、発明者に由来する単位(ボルトやワット等)は発明者に敬意を示して大文字表記にするのが慣例となっています。小文字の単位を大文字表記することがあっても逆には気を付けましょう。

 電圧は何で決まるのかというと金属や化合物によって決まってしまいます。金属元素の場合は、その元素が持つ特有の電位(ここでは電圧と区別)があり、水溶液系では標準電極電位というものが実験的に求められています。中学で習うイオン化傾向とほぼ同じ順序になります。「貸そうかな……」で覚えたことがある方も多いかもしれません。教科書が作られた時代背景と製作者の身近にあった金属のみしか示されていなので、残念ながら今日電池では非常に重要な元素であるLiは含まれていません。その内出てくると思いますが、電圧的にリチウムは非常に重要な元素なのです。

 元素は特有の電位を持ちますが、2つの異なる金属を組み合わせる(ボルタ電池では銅と亜鉛)と電池が形成され、その起電圧は2つの金属の電位の差になります。プラスに使う元素の電位からマイナスに使う元素の電位を引くと電圧になります。

 ほんの少しだけ難しくなりましたが、多くの基礎的な要素は中学時代に習っているのです。習ったから覚えておけということではありませんし、人は忘れるものです。私が言いたいのは、中学までの勉強は非常に重要だということです。「こんなものを習って何になるの」というのは自分の進む道が明確に決まって初めて言えることだと思います。

 電圧の話に戻りますと、元素や化合物特有の電位で起電圧が決まることを簡単に説明しましたが、多くの実用化されている電池は単純な金属元素ではありません。化合物が使われていることが多いですが、この場合も実験的に電位が求められています。

 電圧には開回路電圧(OCV)と閉回路電圧(CCV)と呼ばれるものがあります。電池に負荷がつながれておらず電流が流れていない場合が開回路電圧(厳密に言えば電圧を計測するために極わずかな電流が流れる)で、これは元素の持つ特有のものです。ところが閉回路電圧は電流が流れることによるIRロスで低下した電圧ですので、工夫次第で改善できます。もちろん特有の電圧より高くなることはありません。乾電池とアルカリ乾電池がいい例です。

 乾電池の電圧は1.5Vとされていますが、最初は1.5Vより高い値を示します。放電して行くと電圧が徐々に下がります。負極の亜鉛は量に変化があっても無くなるまでは亜鉛ですが、正極に使用されている二酸化マンガンは放電反応に伴って化合物の組成が変化することで電位が変化しますので、電圧が低下するという結果を招きます。

 通常は閉回路電圧が1.0V前後になるまで使用されます。最近、充電池とも呼ばれるニッケル水素電池の電圧は1.2Vしかありませんが、IRロスも小さく電圧が乾電池と比べ安定しているため、1.0Vに到達するまでに十分にエネルギーが取り出せるので、乾電池代替として十分に性能を発揮できています。ただし、直列数が多い用途では電圧が足りなくなることも考えられます。

 また、正極に同じ二酸化マンガンを使用しても負極を亜鉛からリチウムに変えると電圧は3Vになります。リチウム電池は水溶液を使わないので、標準電極電位とは少し異なりますが、元素が変わるだけで電圧が変わるという判り易い例だと思います。

 多くの人が誤解しているのが、鉛蓄電池の電圧です。12Vと思っている方が多いかもしれませんが、2Vが正解です。よく目にする鉛バッテリーは6セルが直列につながれているため12Vですが、一昔前の原付自転車等は6Vのバッテリーが使われていましたし、海外では8Vのものもあります。電動フォークリフトは2Vの電池が24直接続されていますので、機会がある方は一度シートの下の電池室を覗いてみてください。

 電圧は正・負極材料特有の電位に依存するものであり、次回以降に登場してくるエネルギーに深い関わりを持ちます。

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