電池にも抵抗成分が存在し、内部抵抗と呼ばれます。電池の等価回路では純粋な抵抗以外にもキャパタ成分もあり、電池の構造によってはリアクタンス成分もあり内部インピーダンスと呼ぶべきかも知れませんが、一般的には内部抵抗(Internal Resistance)でいいでしょう。
しかし、普通の抵抗とは少し異なり、電池関連業界では直流抵抗ではなく交流抵抗で示されるのが一般的です。テスター等で抵抗を測る際には電流が流されるので、電池で放電または充電されるため、過渡特性で数値が変化したり、電池にダメージを与える可能性があり、影響を最小限にするために測定中の極性が入れ替わる交流法が採用されています。交流の周波数は1kHzが一般的で、特に断りがない限り電池の内部抵抗というと交流法(1kHz)で測定された値を示します。
1kHzでは1秒間に1,000回振動することになり、振幅は1/1000秒(1msec)です。電気の世界ですと、西日本で交流電源は60Hzです。音では調律の基準となるA(ラ)が440Hzです。有線電話の受話器を上げた時の音も同じです。1kHzは1オクターブ上のシとドの間になりますが、測定の際に音が聞こえる訳ではありません。
抵抗は温度に依存し、温度が上がると抵抗も高くなります。超電導は極低温で実現できており、常温超電導は未だ実用化されておりません。半導体は温度が上昇すると抵抗値が低くなります。電池も低温では抵抗が高くなり、高温側で低くなります。これは電解液の抵抗の依存度が大きいためであると考えられます。
回路技術者の間では電池の直流抵抗を非常に気にされます。我々の感覚ではパルス放電特性です。SOC値や測定前の状態にも依存するので、これらの数値に頼り過ぎるのは危険であり、そもそも抵抗を算出するためには電圧を測定する必要があり、抵抗値から電圧値を予測しようとすることに違和感があります。電圧はリアルタイムで測定可能なパラメータです。
内部抵抗は低いに越したことはありませんが、他の特性とトレードオフとなることも多く、用途に適した特性が確保するために総合的な判断が必要となります
中学の理科では電池に内部抵抗があるということは学びません。それはそれで全く問題はないと思います。基本を理解する上ではむしろそちらの方がいいでしょう。
現実の世界では中学理科と少し異なります。以下の図で①,②,③を比較した場合で考えて見ると、中学の試験の答えは全て「はい」が正しいことになります。ところが、実際には③の方が①より明るくなります。電池を並列に接続することで、内部抵抗が半減するため、回路を流れる電流が大きくなり、電球は明るくなります。流れる電流が大きくなるということは2倍長持ちしない可能性もありますが、ほぼ2倍長持ちするでしょう。単3電池と単2,1電池を比べると単2,1の方が明るくなると思います。ところがアルカリマンガン電池の単3と普通の単2の乾電池ではどうなるか判りません。明るくなるのは大きな容量によるものではなく、内部抵抗に起因しているのです。
EV等では高電圧が必要であるため、多くの電池を直列に接続する必要があります。抵抗は直列に接続すると増加し、並列に接続すると減少します。内部抵抗を考える際には単セルの値だけでなく、接続後の最終的なシステムで考える必要があります。内部抵抗が1で電圧も1の電池Aと、内部抵抗が2で電圧が3の電池Bで電圧が30のシステムを構成する場合を比較すると、電池Aのシステムは内部抵抗が30となり、電池Bは20となります。
何ごとも部分最適を追い求めすぎると間違った方向に向かってしまいます。全体最適を考えられるバランス感覚が重要ではないでしょうか。