湿式光電池

 以前、水素エネルギーについてEVのところで少し触れたと思いますが、水素の利用が燃料電池から水素エンジンに注目が移行してしまった感もあります。水素ガス運搬船も登場して水素自体への関心は急激に高まっていると思います。

 一方で、水素をどの様にして作るかという課題も残されています。石炭から作られた水素では必ずしもクリーンとは言えません。一方で、二酸化炭素と水素からガソリンの様な燃料を作るという動きもあり、水素エネルギーに関しては混沌としています。

 二酸化炭素を拡散させなければ、将来固定化の技術が確立される可能性もありますので一概に否定はできませんが、撒き散らすことは避けなければなりません。

 水素を製造する工程でも二酸化炭素を排出しないグリーン水素が必要となります。自然エネルギーで発電した電気で電気分解するという方法が各所で見られますが、電気としてそのまま使用した方が得策である様な気もします。

 1960年代末に発見され1970年代に研究が盛んであった「本多・藤嶋効果」を活用した湿式光電池についてもう一度見直して見ることにしました。当時も色々と検討して実用化ができなかった技術ですが、当時課題であった部分は現在の技術を応用すれば解決できる可能性があるのではないかと勝手に思っています。

 酸化チタンの半導体電極に太陽光を当てると酸素発生し、対極の白金極で水素が発生するというものです。この技術が応用できれば、電気を得ながら同時に水素も得られるということになります。ただし、話は簡単ではなく酸化チタンは紫外領域の光しか利用できない等の大きな課題がありましたし、可視光領域で反応する電極は寿命が極端に短い等、当時の技術では実用化に程遠いと思われました。紫外領域しか利用できない材料をどうにかするというのは技術が進歩した今でも困難なことであると思われますが、寿命を改善する術は今の技術から得られる可能性はあるかもしれません。

 対極の白金も実用上ではあり得ませんので、これも現実的な材料に変更する必要があります。この材料については70年代にはなかった現在の技術でクリアできそうな候補を既に考えております。

 基礎実験で基本的な確認を行い、特許申請が終わったのでより具体的な検討に移行したいと考えています。我々だけではどうにもならないので、これらの研究にチャレンジする人が増えることも期待しつつ、一緒に検討するパートナーが現れることを願ってこの様な戯言が言える機会を増やしていきたいと考えています。

 海水の分解をすれば電解質を追加する必要もなく、塩分濃度を上げられることにもつながり、ここから食塩のみならず、マグネシウムやリチウムを分離できる可能性もあります。マグネシウムもリチウムも含有量は少ないので産業的に活かせるとは言い難いところではありますが、海に囲まれた日本で検討する価値はあると思います。

 日本でマグネシウムやリチウムを自前で確保するためには、海水利用しかないと思われるので、今回のシステムに関わらず検討が進むことが望まれるところです。

 効率は低くても外部のエネルギーを必要とせず、自立するシステムが構築できれば経済的にも成立するのではないかと考えています。

 湿式光電池は名前こそ電池ですが、電池として作用するのか電解と考える方が妥当なのか、非常に悩ましいところです。

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